統合失調症の原因にかかわる脳内ネットワーク
ドパミンの機能異常が陽性症状と陰性症状を引き起こす1, 2)
ドパミンは、気持ちを興奮させる神経伝達物質です。ドパミンの働きを遮断する抗精神病薬が統合失調症の陽性症状の治療に効果を示すこと、ドパミンの働きを活性化させる薬剤が統合失調症に似た幻覚・妄想を引き起こすことから、統合失調症の陽性症状に脳内のドパミンの過剰が関与しているのではないかと考えられています。
ドパミンによって情報を伝達している神経経路の1つ、中脳辺縁系でドパミンが過剰に放出されていると、幻覚や妄想などの陽性症状が引き起こされるとされています。中脳皮質系の経路では、ドパミンの伝達低下により意欲減退、感情鈍麻などの陰性症状や認知機能障害に関連すると考えられています。
症状の発現に関与するドパミンの機能異常

樋口輝彦ほか監修, 神庭重信ほか編: 臨床精神薬理ハンドブック 第2版, 医学書院, 東京, 2009, pp. 126-128より作成
セロトニンも統合失調症の陰性症状にかかわる1)
ドパミンの働きを遮断する作用のある抗精神病薬で陰性症状が改善されない患者さんに、セロトニンの働きを遮断する作用のある抗精神病薬を投与すると、陰性症状が改善することがみられたため、セロトニンが陰性症状の発現と関連しているのではないかと考えられています。
統合失調症の治療薬は、ドパミンやセロトニンを調節する作用をもっています。
グルタミン酸(NMDA受容体)とGABAも統合失調症に関与2)
その他、グルタミン酸という神経伝達物質を神経細胞に取り込むNMDA受容体の機能低下が注目されています。また、GABA神経の異常も関係するのではないかといわれています。これらの異常を背景に、ドパミンの機能亢進などが生じている可能性もあります。
- 参考文献
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- 樋口輝彦ほか監修, 神庭重信ほか編: 臨床精神薬理ハンドブック 第2版, 医学書院, 東京, 2009, pp. 123-128, 132-135
- 尾崎紀夫ほか編: 標準精神医学 第8版. 医学書院, 東京, 2021, pp. 280-281