統合失調症ナビ

監修: 藤田医科大学医学部 精神神経科学講座 教授
岩田 仲生 先生

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日常生活に困難をもたらすことがある
「認知機能障害」とは?1)

認知機能とは、人間がものを認識するために必要な知的な能力のことです。記憶力、判断力、集中力、実行力、計画能力、統合能力、問題解決能力などが含まれます。

統合失調症ではこれらの認知機能が低下し、生活・社会活動全般に支障をきたします。

<記憶力の低下>新しいことを覚えられない、何をしようとしていたのかがわからなくなる

記憶力が落ちてしまい、新しい仕事の手順を覚えることが難しくなります。

取り組んでいる作業や動作を続けるためには、必要な情報を一時的に記憶する能力である「ワーキングメモリー(作業記憶)」が必要です。しかし、この能力が下がってしまい、何をしようとしていたのかを忘れてしまったり、会話をしている相手の話が頭に入ってこなくなったりします。

<注意力の低下>必要な情報や刺激に注意を向けることができない

人は、周囲のさまざまな情報や刺激にさらされています(テレビの音や人の話し声、におい、光など)。それらの情報や刺激のうち、必要なものだけに注意を向けることが難しくなります。たとえば、会話中に周囲の動きや物音などにとらわれ、落ち着きがなくなるなどの行動がみられます。

<比較照合する能力の低下>過去の記憶と照合して適切に判断することができない

ある情報や刺激に対して、過去の記憶の情報と照合して適切に判断することができなくなります。

たとえば、Aさんがもっている本と同じものをBさんがもっているという理由だけで、BさんをAさんと思い込むといったことが起こります。

<実行機能の低下>計画を立てたり、効率のよい手順を考えたりすることができない

計画を立てて物事をおこなうことや、手順を決めて仕事を効率よく進めることができなくなります。

<統合能力の低下>物事をグループ化して整理することができない

さまざまな情報の似ている点と異なる点を区別し、物事をグループに分けて整理する能力が低下し、過去の似たような体験に基づいた対応ができなくなります。

たとえば、箱は積み上げ、衣類はタンスにしまうといった整理整頓ができなくなる、手順よく料理をすることができなくなるといったことが起こります。

認知機能障害は病気の予後、特に社会的・職業的機能の回復に影響を及ぼします。

どの認知機能が低下しているのかを理解したうえで、適切な心理社会的療法(リハビリテーション)や訓練を受けることが大切です。

参考文献
  1. 白石弘巳監修: 患者のための最新医学 統合失調症 正しい理解とケア. 高橋書店, 東京, 2015, pp. 44-45
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