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症状について

なぜ、精神分裂病を統合失調症と呼ぶことにしたのですか?

精神分裂病という病名が学問的にふさわしくないということと、病名が悲惨なひびきを持っていることにより、ふさわしい病名を求める声が高まったからです。
イラスト:疑問に思っている様子

ひとことで言えば、精神分裂病という病名が学問的にふさわしくないということと、病名が悲惨なひびきを持っていることによります。また、この病気の原因が 明らかにされるようになり、治療が進んだ今の時代に、精神分裂病という病名が合わなくなったためでもあります。精神分裂病という病名は 「schizophrenia(スキゾフレニア)」という言葉の訳語ですが、もともとは「連想の分裂」という意味です。つまり、物を考えたり言葉を話したりするとき、一つの事柄から次の事柄へと関連をもって考えが進み、一つのまとまった筋道を持つことになるのですが、そのような連想が障害されているということからつけられた病名でした。それが日本語訳では、いかにも精神活動全体が分裂したかに思える病名になってしまったのです。
最近の研究から、この病気には脳の神経から次の神経へと情報を伝えるための物質(神経伝達物質と呼ばれる)が関係していることがわかってきました。また、それを調節をする新しい薬が使われるようになって、脳の働きをそれほど損なわずに症状を抑えることができるようになったことなどから、病気についての理解が進みました。それにともなって、時代にふさわしい病名を求める声が高まり、精神科医の集まりである日本精神神経学会が精神分裂病という病名を検討する委員会を作り、検討した結果、統合失調症と呼ぶことが決まったのです。

統合失調症の原因はなんですか?

まだはっきり分かっていませんが、脳の機能に障害があって起こる病気であることが明らかにされつつあります。
イラスト:疑問に思っている様子

原因はまだはっきり分かっていませんが、脳の機能に障害があって起こる病気であることが明らかにされつつあります。 脳の中では、神経細胞同士の間でさまざまな情報を伝えるために、神経伝達物質という化学物質が働いています。統合失調症では、その物質が過剰に働いてしまうことで、情報伝達に混乱をきたして色々な症状が出現するのではないかと考えられています。

症状にはどのようなものがありますか?

大きく分けて「陽性症状群」と「陰性症状群」があります。

統合失調症でみられる症状は多彩で、1人の患者さんにすべての症状が出るとは限りません。ここでは症状をわかり易く理解するために、大きく「陽性症状群」と「陰性症状群」の2つに分けてお話しましょう。

イラスト:陽性症状と陰性症状
  • 陽性症状群
    • 妄想:物事の誤った意味づけをしたり、偏った独断的な考えに基づくもので、他人に自分の心の中を知られてしまう、誰かが監視している、誰かが自分をあやつるなど非現実的で奇妙なものや、まわりから嫌がらせをされる、仲間外れにされるなど、周囲の出来事に特別の意味を持たせて解釈したりします。
    • 幻聴:現実にはない声に話しかけられたり、命令されたりします。
    • 混乱した思考とまとまりのない会話:一貫性のある話をしたり、筋道立った会話を続けることができません。
    • まとまりのない行動や落着きのなさ:目的にあった動作ができなくなったり同じ行動や姿勢をとり続けます。あるいは不安がって落着きません。
    • まとまりのない知覚:周りの音や感じたことを歪んだ形で認識しておびえてしまいます。妄想へと発展しやすいものです。
    • 感情の不安定さ:過敏になって、ささいなことで怒ったり取り乱してしまいます。
  • 陰性症状群
    • 感情鈍麻:感情表現が乏しくなり、情緒性などが低下する程度から、快・不快、喜怒哀楽の感情反応が消失するものまでさまざまです。
    • 思考内容の貧困化:会話の量・内容が乏しくなったり,会話が止まったり返答が遅くなります。話のまとまりが悪くなります。
    • 意欲減退:意欲が乏しくなり、学業、仕事などが続かなくなります。終日ごろごろしています。
    • 閉じこもり:周りの出来事に無関心で、非活動的になります。
    • 注意・集中力の障害:気が散りやすかったり、注意・集中が長続きしません。

遺伝しますか?

必ずしも遺伝するわけではありません。
イラスト:遺伝の影響は?

遺伝が影響している場合もそうでない場合もあります。一般に統合失調症にかかる確率は100〜120人に1人くらいですが、親族に統合失調症にかかった人がいる場合の発病率はそれよりやや高くなっています。たとえば、あなたの両親か兄弟の誰か1人がこの病気になったことがあるとすれば、あなたがこの病気になる確率は10%程度といわれています。遺伝子の構成が同一である一卵性双生児では、どちらか1人が発病していて、さらにもう1人が発病する可能性は50%といわれていますが、必ず発病するわけではありません。
最近、統合失調症に関係すると思われる遺伝子がいくつか確認されたとの報告がありますが、一卵性双生児の発病の一致率をみると約1/2しか発病しませんから、単純に遺伝だけの問題なのではなく、環境など、多くの因子が関与していると考えられます。

治療について

治療方法にはどんなものがありますか?

基本は薬物療法です。薬物療法に加えて、病状の回復や程度に応じた精神療法やリハビリテーションが行われます。
イラスト:服薬の様子
  • 薬物療法

治療の基礎となるものです。症状が激しい時期(急性期)の治療には抗精神病薬と呼ばれる薬物が特に効果を発揮します。状況に応じて錠剤、内用液、散剤などの飲み薬や注射薬が選択され、使われます。慢性期でも、再発を防ぎ精神療法やリハビリテーションをスムーズに進めていくためにも長期にわたる薬物療法をきちんと受けることが必要です。

イラスト:診察での精神療法
  • 精神療法

患者さんだけでなくその家族もさまざまな不安や問題をかかえます。カウンセリングなどの精神療法を受けることで、病気や自分のもつ症状への理解を深め、精神的な安定をとりもどし、本人が再び社会や家庭での日常生活に戻れるようになることにつながります。

イラスト:薬物療法、精神療法、リハビリテーション
  • リハビリテーション

リハビリテーションは薬物療法によって激しい症状がおさまった後に開始します。
入院中は作業療法士などによる作業療法や、レクリエーション療法などを行います。外来ではデイケアに通所して、体力や集中力の回復を図ったり、対人関係など、生活上起こるさまざまな問題を解決する技法、ストレスへの対処法を学ぶことができます。

治療に使われる薬にはどのようなものがありますか?

抗精神病薬と呼ばれる薬が現在十数種類あります。

統合失調症の治療に用いられる薬は、抗精神病薬と呼ばれています。この薬を飲むと病気の為に起こっている感情不安定、妄想、幻覚、思考の障害などを軽くすることができます。脳の中で起きている情報伝達機能の混乱を改善させることによって、症状が抑えられると考えられています。
本邦では、現在十数種類の薬が治療に使われています。(下表「主に使用されている統合失調症治療薬一覧」を参照)

イラスト:患者と医師が薬を使って二人三脚で治療に励む様子
  • 統合失調症治療薬の特徴
    • 従来型(定型)抗精神病薬
      主にドーパミンという神経伝達物質に作用することにより、陽性症状に対する効果が期待されています。
    • 新規(非定型)抗精神病薬
      主にドーパミンとセロトニンという神経伝達物質に作用することにより、陽性症状、陰性症状の両方に対する効果が期待されています。

現在使われている抗精神病薬は大きく分けると、(1)主にドーパミンという神経伝達物質に作用することにより、陽性症状に対する効果が期待される「従来型の抗精神病薬」と、(2)主にドーパミンとセロトニンという神経伝達物質に作用して、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待されている「新規抗精神病薬」があります。薬の効果には個人差があるため、どの薬が一番よく効くか、どの程度の量にするか、副作用の問題はないかなどを検討しながら、その人に合った薬を見つけていく必要があります。その為には、患者さんが、処方された薬を正しく服用し、その結果、楽になったことや、不快に感じることなど、何でも主治医にしっかりと伝えていただく必要があります。 薬物療法は「本人と主治医との共同作業」と考えてください。

  • 主に使用されている統合失調症治療薬一覧
    分類 一般名 商品名

    従来型抗精神病薬

    クロカプラミン

    クロフェクトン

    クロルプロマジン

    コントミン、ウインタミン

    スルピリド

    ドグマチール、アビリット、ミラドール

    ゾテピン

    ロドピン、メジャピン

    チミペロン

    トロペロン

    トリフルオペラジン

    トリフロペラジン

    ネモナプリド

    エミレース

    ハロペリドール

    セレネース、ハロステン、リントン

    ピモジド

    オーラップ

    フルフェナジン

    フルメジン

    ブロムペリドール

    インプロメン

    ペルフェナジン

    PZC、トリラホン

    モサプラミン

    クレミン

    レボメプロマジン

    ヒルナミン、ソフミン、レボトミン

    新規抗精神病薬

    リスペリドン

    リスパダールなど

    パリぺリドン

    インヴェガ

    クエチアピン

    セロクエル

    ペロスピロン

    ルーラン

    オランザピン

    ジプレキサ

    アリピプラゾール

    エビリファイ

    ブロナンセリン

    ロナセン

  • 統合失調症治療薬には、同じ成分でもさまざまな形(剤形)があります。
    • 内用液
      • 水なしでも飲めます。
      • 携帯に便利な分包品もあります。
    • 錠剤・カプセル剤
      • 携帯に便利で、保存性にも優れています。
      • 舌上で唾液により溶ける錠剤もあります。
    • 細粒
      • 量を細かく設定できます。
    • 持効性注射剤
      • 1回の注射で2〜4週間効果が続きます。

新しい抗精神病薬はどのような特徴を持っているのでしょうか?

大きく分けて、効果と副作用の点で特徴があります。

効果の面の特徴は、これまでの薬(従来型抗精神病薬とか定型抗精神病薬と呼ばれます)は、主として陽性症状と呼ばれる幻覚や妄想に良く効きますが、閉じこもりがちになったり、意欲的になれない、生き生きとした感情がわかないといった陰性症状にはあまり効果がありませんでした。
新規抗精神病薬(非定型抗精神病薬)は、陽性症状だけでなく陰性症状にも効くという大きな特徴を持っています。なかでも、認知機能を改善することが特徴のひとつです。認知機能というのは、ものを考えたり、注意を向けたり、生き生きとした感情を持つなどの広い範囲の脳の働きに関係していますが、統合失調症の患者さんでは、「物事を感じる能力がなくなった」とか「心が空白になった」などという訴えがみられます。新しい薬はそのような点にも効果が認められています。
また、従来型の薬に比べ、手や体のふるえ、とくに舌や顎のこわばりといった錐体外路症状と呼ばれる副作用が少ないことも特徴です。ただし、薬の効果には個人差があり、従来型の薬のほうが合う方もいます。どの薬がよく効くかは主治医と相談しながら検討していきましょう。

新しい治療薬には心配するような副作用はないのでしょうか?

従来型の薬よりは副作用が少ないのですが、副作用がないわけではありません。

新規抗精神病薬(非定型抗精神病薬)も、従来型の薬よりは副作用が少ないということだけで、副作用がないわけではありません。たとえば、遅発性ジスキネジアと呼ばれる、舌や顎、顔面の筋肉がひとりでに動いたり、奇妙な動きをする症状は従来型のハロペリドールよりは5分の1から10分の1の割合でしか現れないといわれていますが、それでも全くないわけではありません。
そのほかに、体重の増加が指摘されています。原因は明らかではありませんが、ときには5kg前後の増加が報告されています。また、新規抗精神病薬のなかには血糖値を高める作用が比較的強い薬があり、糖尿病の患者さんでは高血糖を引き起こす危険性があるため投与をさけなくてはなりません。その為新規抗精神病薬を飲んでいる時には血糖値や口の渇きなどに注意を払うことも大切です。一般的な副作用としての眠気やふらつきは新規抗精神病薬でもみられます。

副作用が心配です。副作用が起こったときどのようにすればよいですか?

副作用や不快な症状が起きた場合には、まず主治医に相談してください。
イラスト:医師に相談する様子

抗精神病薬に限らず、どのような薬にも副作用はつきものです。統合失調症のように長期間薬を服用する必要がある病気では、副作用に対して、より敏感になるのは当然のことでしょう。しかし、副作用を心配して服薬を中止したり、自己判断で服用量を調整するべきではありません。その結果、再発したり、副作用がむしろひどくなることもあり、危険です。そのようなことを起こさないためにも、副作用についての知識や対処法を理解しておくことは、本人だけでなく家族の方にとっても重要です。定期的に尿・血液検査などを受けておくことも副作用の早期発見に有用です。次にあげるような副作用や不快な症状が起きた場合には、まず主治医に相談してください。主治医は下記にあるような処置をしてくれますから、けっして自分勝手に判断して薬を止めたりしてはいけません。

  • 抗精神病薬の副作用
    • 口が渇く、尿が出にくい、便秘
    • 手足、顎、舌などがこわばって動かせない動作がぎこちなくなる
    • 手または体の規則的なふるえ
    • からだが落ち着かず、じっと座っていられない。そわそわする
    • 性欲の減退、無月経
    • 体重の増加
    • 高血糖
  • 副作用に対する処置
    • 薬の量を減らす
      2〜4週間の間隔で抗精神病薬を徐々に減量します。副作用が少なく、しかも再発を起こさない用量を維持するためです。
    • 薬を追加する
      抗精神病薬の副作用をとめる(治療)には、トリヘキシフェニジル、ビペリデンなどの抗コリン薬がよく用いられます。しかしこの薬自体が副作用を生じさせることもあるため、主治医はこれらの薬を効果的で、かつ最低の用量で用います。
    • 副作用の少ない薬に変える
      最近は比較的副作用の少ない新規抗精神病薬が使われています。もし、従来型抗精神病薬で上手くコントロールができていても副作用が出た場合は、非定型抗精神病薬(「主に使用されている統合失調症治療薬一覧」参照)に切り替ることもあります。

よくなった後、薬を飲まないとどうなりますか?

再発の可能性が高くなります。
イラスト:薬を止めると再発しやすくなる

多くの方では、薬を止めると再発の可能性が高くなります。家族と良く理解しあえる関係であっても、患者さんの日常生活にはさまざまなストレスがつきもので、そのようなストレスにさらされると再発しやすいとの報告があり、うまくいっていない家族と長時間一緒に生活している場合では、1年以内に再発する可能性が90%以上にもなるという報告もあります。いずれにしろ再発を防ぐためには継続した薬物治療が必要です。
どうしても規則的に服用できない場合には、1回注射すると長期間にわたって効果のある薬もあります。主治医に相談してみてください。

どのようなときに入院が必要ですか?外来通院ではだめですか?

症状が激しい場合などは入院が必要になることがあります。
イラスト:入院の様子

最近は、精神科診療所(クリニック)が増え、住いの近くで気軽に治療を受けることができるようになり、外来での治療が容易になってきました。しかし、症状が激しく妄想や幻覚により言動が大きく影響されてしまう場合や自殺を企てることなどがあると、外来通院だけで対応できず、入院が必要になることもあります。
入院の要否については、まず主治医に相談してください。

その他のお悩みについて

家族としてどんなことができますか?

正しい知識を得るなど、適切な支援のポイントを心がけてください。
イラスト:家族の適切な支援

糖尿病や心臓病、癌などの原因が家族の責任ではないのと同様に、統合失調症の原因も家族の責任でないことは既に述べました。家族の方々が自分を責める必要はありません。しかし、患者さんにとっての最大の支援者は家族であり、適切な支援はご本人への大きな力となります。
次のようなことを心がけてください。

  • 適切な支援のポイント
    • 正しい知識を得る
      知識は力です。正しい知識があってこそよい対応ができるのです。
    • 適切な治療を受けられるよう協力する
      毎日の服薬がきちんとできるように手助けします。適切な治療を受けられないでいるときには、医療機関や保健所などに相談します。
    • 治療を続けるように本人を勇気づける
      治療は長期間にわたるため、途中でくじけないように本人を勇気づけることが大切です。
    • 回復期間中に本人をせき立てたり期待をかけすぎないこと
      回復当初、本人は疲れきっています。ゆったりしたペースを守って回復の道筋を確かなものにしましょう。
    • 家族同士で励ましあう機会をもつ
      本人の回復と同時に、家族も回復することが大切です。同じ体験をもった家族同士で励まし合うことで、家族が心のゆとりをもつことができれば、本人への良い対応にもつながります。病院・保健所の家族教室などで知り合った他の家族との交流も大切です。地域家族会へ参加するのもよいでしょう。

わからない事などは保健所、精神保健福祉センターや地域の家族会へ問い合わせることができます。連絡方法などについては各地の保健所精神保健福祉センター、家族会の全国組織の(NPO)全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)をご覧ください。

統合失調症と診断されたことを本人にきちんと伝えるべきでしょうか?

30歳の娘が統合失調症と診断されました。まだ、本人にそのことは告げてはいませんが、本人が大変なショックを受けてしまうのではないかと心配しています。やはりきちんと伝えるべきでしょうか?

基本的には病気の性質をよく説明した上で告知するのがよいですが、告知するタイミングは医師と相談しながら決めるのがよいでしょう。

かつて統合失調症を告知することはかなりはばかられていましたが、現在では病気を十分に説明し、理解と同意を得るインフォームド・コンセントが重視されていることからなるべく告知した方がよいという考え方に傾きつつあります。また、統合失調症は再発を繰り返しやすいいわば慢性疾患の1つですから、どうしても治療が長期間に及ぶため、本人が病気を理解していないと治療に対するモチベーションが保てず、途中で治療を放棄してしまうことにもなりかねません。したがって、基本的には病気の性質をよく説明した上で告知するのがよいと思います。ただし、告知することで本人が大変ショックを受けてしまう場合が少なくありませんから、告知するタイミングは慎重を期す必要があります。本人の様子をみながら、告知するタイミングを医師と相談しながら決めるのがよいでしょう。

本人が受診を拒否する場合、どのように説得したらよいでしょうか?

25歳の息子ですが、幻聴と妄想がひどく、統合失調症ではないかと思い一緒に病院に行こうと説得するのですが、本人に病識がなく拒絶されてしまいらちがあきません。どのように説得したらよいでしょうか?

病気に焦点を当てるのではなく、症状に焦点を当てて説得するとうまくいく場合があります。
イラスト:受診を勧める様子

統合失調症の人に病識がないことがあり、その為に受診を拒否することはよくみられることです。本人を半ばだます形で病院へ連れて行くことが往々にしてみられますが、これは家族や病院に対する不信感を募らせてしまい、その後の治療にも影響してきますので望ましくありません。できるだけ、本人が納得するように説得しなければなりませんが、その際のポイントはなるべく病気に焦点を当てるのではなく、「具合が悪そうだから」というように症状に焦点を当てると受け入れてもらいやすくなります。まったく病識がない人もいますが、実は本人もどこかおかしいと感じているけれどもそのことを認めたくないために拒否していることも少なくなく、できるだけ本人がつらいと感じている症状に焦点を当てて説得するとうまくいく場合があります。また、本人がどうしても応じない場合には、医師や精神保健福祉士に相談して往診に来てもらうといった方法もあります。受診につなげるための確実な方法はありませんが、医療機関の人と相談しながら適切な方法を考えることが大切です。

精神障害者保健福祉手帳は取得した方がよいのでしょうか?

精神障害者保健福祉手帳を取得した方がメリットがあるとわかっているのですが、近所や周囲に知られると思うと躊躇してしまいます。やはり取得した方がよいのでしょうか?

手帳は精神障害者の生活を支え社会参加を手助けする制度です。ぜひ取得を。

精神障害者保健福祉手帳は、精神障害をもつ人が一定の障害の状態にあることを証明するもので、この手帳を持っていることによりさまざまな支援を受けることができるなど、精神障害者の生活を支え社会参加を手助けする制度です。このことは裏を返せば、手帳を取得しないことはそれだけ社会生活上のハンディキャップを負うことを意味しています。障害を受容し、障害と共に生きていくことを受け入れることは、障害を乗り越えてその人らしく生活を全うしていくために必要なことですし、手帳を取得するということは、障害を積極的に受容していく生き方にもつながっていきます。精神障害の場合、障害は決して永遠ではなく、治療如何によっては回復が期待できます。その為にも障害を受け入れて積極的に治療に臨み、回復を目指した生き方が望ましいといえるでしょう。そのような意味からもぜひ手帳を取得されることをお勧めします。

育て方が悪かったのでしょうか?

育て方の問題で発病するものではありません。
イラスト:家族の協力

統合失調症は、さまざまな要因が複雑にからみ合って発病する病気であり、育て方の問題で発病するものではありません。ご両親が「育て方が悪かったから…」と自分を責める場合もしばしば見受けられますが、そう考える必要はありません。 ただし、発病後の経過には家族の関与が大きく影響しているらしいという研究報告があります。よりよく病気を回復させるために、また再発を防ぐためには家族の協力と適切な対応が重要なのです。

薬を飲むのを嫌がります。どのように説得したらよいでしょうか?

息子が統合失調症と診断されて治療を開始したのですが、しばらくは薬のちゃんと飲んでいたのですが、次第に薬を飲むのを嫌がるようになってしまいました。どのように説得すれば薬を飲むようになるでしょうか?

薬を拒否する原因をつきとめ、それに応じた対処が必要です。

薬による治療が開始されてから薬を拒否する原因は2つ考えられます。1つは副作用が嫌で薬を飲まなくなる場合です。治療の意義を理解していない患者さんでは積極的に副作用を訴えることをせずに服薬を中断してしまうことが少なくありません。特に薬の飲み始めの初期では効果よりも副作用が強く出る場合があり、そのことが服薬の中断につながることがあります。その場合には、本人につらい副作用が生じていないかどうかを聞き取って、主治医に相談して薬の種類や量を調節してもらう必要があります。
もう1つは症状が少しよくなったからといって病気が治ったと勝手に判断して服薬をやめてしまう場合です。これは、「薬を飲んでいる」=「統合失調症の自分」という考えが背景にあって、症状がなくなって薬を飲まなくなれば統合失調症を抱えている現実から目を背けられるという心理が働いているといえます。これは本人が病気を受け入れられていない証拠ともいえますが、治療の継続には本人に治療の重要性について根気強く理解させていくことが必要になります。

意欲低下が続いており、社会生活技能が衰えていくのではないかと心配です…

統合失調症の息子が退院してから1年が過ぎましたが、いまだに家でゴロゴロしています。意欲が低下するのは症状の1つだからと口うるさく言わないようにしているのですが、かといってこのままでは社会生活技能がどんどん衰えていくのではないかと心配で仕方ありません。どうしたらよいでしょうか?

主治医に相談し、意欲低下の原因に応じた対処を。

陰性症状はなかなか改善しにくく、意欲や活動性が低下した当事者をどのように回復に至らせるのかは大変難しい問題です。意欲や活動性の低下は症状の為に引き起こされている場合と、服薬している薬の副作用としてもたらされている場合があります。あまりに意欲や活動性の低下が著しいようであれば主治医に相談して、場合によっては薬の種類を変更してもらうといった方法も考えられます。また、症状の為に引き起こされている場合には、意欲や活動性が上がってくる時期というのは人によって異なりますので見極めが難しいところです。主治医と相談しながら、症状の程度に合わせて本人に無理のないペースで少しずつ活動するように促していくことが大切です。

20年以上自立できない息子。私が亡くなった後が心配です…

息子が統合失調症になって20年が過ぎ、すでに40歳を超えていますが、いまだに自立することができずにいます。私がまだ元気なうちは大丈夫ですが、亡くなった後がとても不安で仕方がないのですが?

親御さんが元気なうちに本人の自立に向けて働きかけることが必要です。

高齢の親御さんにとってはお子さんの「親なきあとの自立」は大変気がかりな問題です。しかし、基本的な考え方として、親なき後の自立を心配するのではなく、親御さんが元気なうちに本人の自立に向けて働きかけることが必要です。というのも、親なき後に自立の為の訓練を始めてもなかなか難しいからです。たとえば、グループホームを利用するにしても、親御さんがいれば何かあっても支えてくれるという安心感があるから本人は利用してみようという気になるのです。親なき後にあわてて自立するためのアクションを起こしても、経験もなければ頼る存在もないためうまくいくはずがありません。何かあったら支援の手を差し延べるというスタンスで、何事にも早い段階から本人に体験として積ませることが大切です。